カタパルトスープレックスニュースレター準備号
ChatGPTがChromeの使用率に追い付きつつある/トランプ2.0に備える企業/Miroが従業員の18%を解雇/Waymoが「過去最大」のデータセットを作成/Google DeepMindがAlphaFold 3をオープンソース化/Near Protocolが世界最大のオープンソースAIモデルの構築を計画など
ChatGPTの月間使用率がGoogle Chromeの使用率に近づきつつある
ChatGPTの月間訪問者数が37億に達し、世界で最も利用されているウェブブラウザであるGoogle Chrome(約34.5億ユーザー)に匹敵する規模にまで成長したSimilarwebのデータによると、ChatGPTは前月比17.2%、前年比115.9%という著しい成長を遂げている。ほかの生成AIに関してもPerplexityは10月に9080万回の訪問があり、前月比25.5%増、前年比199.2%増を記録。GoogleのGeminiは2億9160万回の訪問で、前月比6.2%増、前年比19%増。AnthropicのClaudeは8410万回の訪問で、前月比25.5%増、前年比394.9%増。MicrosoftのCopilotウェブサイトは6940万回の訪問で前月比87.6%増、GoogleのNotebookLMは3150万回の訪問で前月比200%以上の成長。生成AI市場全体が著しい成長を続けていることを示している。(リンク)
AIからハードウェアコストまで: トランプ2.0に備える企業のIT責任者たち
トランプが次期大統領に選出されたことを受けて、企業のテクノロジーリーダーたちがどのような影響を予測し、準備を進めているかについての解説記事。主に3つの重要な分野での影響が取り上げられています。①関税政策、②AI規制緩和、M&A規制緩和が影響するとみられている。関税政策については中国に対して60%以上、その他の国々に対して10-20%の関税を提案。これは1930年代以来最も高い税率となる。多くの企業が従業員用のラップトップやスマートフォンなど、海外製のハードウェアに依存しているため、この関税引き上げは企業のIT予算に大きな影響を与える可能性がありる。AI規制についてはバイデン政権が2023年10月に施行したAIに関する大統領令を撤廃する意向を示している。これにより、AIの開発や導入がより迅速に進む可能性がある一方で、企業は独自にAIモデルの安全性や偏見の問題に取り組む必要性が高まる。最後に、企業の合併・買収(M&A)に関する規制緩和が予想されている。これはAI時代において、大企業が人材や技術を獲得するために積極的なM&Aを行う可能性を高める。ただし、CIOにとってはシステム統合などの新たな課題も生じる可能性がある。(リンク)
一時期175億ドルまで評価されたユニコーンのMiroが、競争圧力の中で従業員の18%を解雇
生産性向上ソフトウェアのスタートアップ企業Miroが大規模なレイオフを発表。今回のレイオフでは従業員の約18%にあたる275人が影響を受ける。これは、2023年2月に119人(当時の従業員の7%)を削減して以来、2回目の人員削減となる。Miroは2011年にロシアで設立され、デジタルホワイトボードを使用したオンラインコラボレーションツールを提供している。コロナ禍でリモートワークが普及する中で急成長し、2022年までに4000万人のユーザーを獲得し、企業価値は175億ドルにまで上昇した。「マルチプロダクト企業」を目指すと言いながら、実際には新機能の追加に留まっていたこと、高い評価額で多額の資金を調達しすぎたこと、そして必要以上の人員を雇用していたことなどが問題として挙げられている。(リンク)
Waymo、歩行者と自転車の負傷者に関する「過去最大」のデータセットを作成、調査結果を公開
WaymoがダッシュカムメーカーのNexarと提携して歩行者や自転車利用者などの交通弱者(Vulnerable Road Users: VRUs)に関する大規模な研究データセットの公開。これは米国最大規模のVRU事故データセットとなる。調査結果から歩行者や自転車利用者が信号を無視して道路を横断するなど、ドライバーにとって「予期せぬ」行動を取った場合に事故のリスクが高まることや、樹木や建物、他の車両などによる視界の遮断(幾何学的な遮蔽)も事故リスクを高める要因となっていることなどが判明。さらに、車両の進行方向や旋回の仕方も事故の発生に大きく関係していることが分かった。Waymoはさらにドイツの交通研究グループであるVUFOと協力関係を結ぶ。VUFOは20年以上にわたるVRU事故データを保有しており、これは現在入手可能な最も関連性の高いデータとされている。Waymoは研究結果を公開することで、ライバル企業を含む業界全体の安全性向上に貢献したいとしている。(リンク①)(リンク②)
Google DeepMindがAlphaFold 3をオープンソース化
これまでGoogle DeepMindはAlphaFold 3についてコードとモデルウェイトは非公開、ウェブサーバー(alphafoldserver.com)を通じた限定的なアクセスのみを提供し特に創薬関連の予測機能は制限するとしていた。しかし、科学的な再現性が確保できない、研究の透明性が損なわれる、論文発表時にコードを公開しないなど批判を浴びていた。この批判を受けて、DeepMindは方針を転換し、「6ヶ月以内にオープンソース版を公開する」ことを約束。今回それが実現するに至った。AlphaFold 3の開発者であるDemis HassabisとJohn Jumperが2024年のノーベル化学賞を受賞してからの発表となった。コード自体はCreative Commonsライセンスで公開されるが、重要なモデルウェイトへのアクセスには学術機関所属の証明が必要。また、商用利用は明確に禁止されている。これはDeepMindの姉妹組織であるIsomorphic Labsの商業的利益を保護しつつ、学術研究の発展を促進するバランスを取ろうとする試みと解釈できる。(リンク①)(リンク②)(リンク③)
暗号化通貨Near Protocolが世界最大の1.4Tパラメータ・オープンソースAIモデルの構築を計画
Near Protocolが世界最大規模となる1.4兆パラメーターのオープンソースAIモデルの構築を目指すと発表。これは現在のMetaが公開しているLlamaモデルの3.5倍の規模となる。Near Protocolは分散型クラウドコンピューティングに特化したブロックチェーンプラットフォームで、NEAR AIという研究開発ラボを立ち上げている。約1.6億ドルという多額の開発費用が必要となるが、Near Protocolの共同創設者でありTransformerアーキテクチャの共同開発者でもあるイリア・ポロスキンは、暗号資産業界ではこの額は調達可能だとしている。資金調達はトークン販売で行い、モデルの利用から得られる収益を投資家に還元する仕組みを構築するという。(リンク)
B2B営業における新しいトレンド「Pay-Per-Pitch(ピッチ課金)」
「Pay-Per-Pitch(ピッチ課金)」きっかけはYotpo社のCEOが見込み顧客の紹介に対して1,000ドルを支払うという方針。この「Pay-Per-Pitch」アプローチの本質は、見込み顧客やその関係者に直接対価を支払って、確実にアテンションを獲得するという点。例えば、Pitchfireというサービスでは、見込み顧客が自分の時間と注目度に価格を設定でき、CMOへのピッチ機会を得るには50ドルを支払う。LinkedInの広告クリック単価が15-50ドル、営業担当者(SDR)の月額コストが8,000ドル以上、コールドメールの成功率がわずか1%であるのに対し、Yotpoの方式では1,000ドルで確実な紹介が得られ、Pitchfireでは50-250ドルで確実な商談が設定できる。(リンク)
2025年、ブランドセーフティは減少し、SEO費用は増加するとForresterが予測
2025年には、企業はより「ブランドスマート」なアプローチを取るようになり、10の影響力のある世界的ブランドがブランドセーフティ企業DoubleVerifyの使用を中止すると予測。TikTokの米国での禁止は2025年には実現しないと予測。むしろ、パフォーマンスメディア予算の10%がTikTok Shopを含むソーシャルコマースに向けられると予測。AIに関しては、特にSEOマーケティングでの存在感が増すと予測され、検索エンジンへのAI統合の結果としてSEO予算は3倍に増加すると見込んでいる。(リンク)
SpotifyのAIは本物のDJにはかなわない
自分も仕事がらみでDJの練習をしているので個人的に気になる記事。まず前提知識として記事にはない内容を個人的に解説。Spotifyをはじめとした一般的な音楽ストリーミングサービスではPCDJ(PCを使ったDJ)ができない。Serato DJなどのDJソフトウェアからアクセスできない。Spotifyも以前はDJayなどのDJソフトからアクセスできたのだけど、今はアクセスを制限している。SpotifyはPCDJソフトウェアのアクセスができないようにする代わりに、独自のAIDJ機能を搭載している。これはSpotifyのAIDJの機能に関する評価を行った記事。
ここから記事の解説。記事の中でAIによる選曲はユーザーの好みに完璧に合致した「デザートビュッフェ」のようなものである一方、人間のDJによる選曲は時には好みでない曲も含まれる「バランスの取れた食事」のようだと表現。記事の解説終わり。
よくわからないたとえだけど、AIDJには人間のDJのワクワク感がないと個人的にも思う。現状ではPCDJができるストリーミングサービスはTIDALなど一部に限られている。ストリーミングサービス側も多分ライセンスの問題とかもあるんだろうけど、DJは音源をレコード、CDかダウンロード販売(または違法のリッピング)に頼らなければいけない現状は個人的にいかがなものかと思っている。(リンク)
Block(旧Square)、TIDALへの投資を縮小し、ビットコインの採掘を優先
そんななかでTIDALも縮小という記事。PCDJには受難の時代。TIDALはSquare(現Block)に2021年に買収されている。Block CEOのジャック・ドーシーは音楽ストリーミングプラットフォームTIDALへの投資縮小とビットコイン関連事業の強化という大きな方向転換を株主向けレターで示した。分散型インターネット「Web5」の開発を目指していたビットコイン関連部門であるTBDを閉鎖する。この人員削減は、TIDALの残りのスタッフの約4分の1、約100人規模になる可能性があると報じられている。これは2023年12月に行われた10%の人員削減に続くもの。(リンク①)(リンク②)(リンク③)(リンク④)