カタパルトスープレックスニュースレター
増税はスポーツ賭博のブラックマーケット化につながる可能性/フカクジツな時代の生き残り戦略、パラマウントで人員削減/ChatGPTが生成した文章は見破られる/ロサンゼルス抗議デモで偽情報が拡散、古い陰謀論が再燃/映画のスクリーンサイズ(アスペクト比)について深掘り/など
増税はスポーツ賭博のブラックマーケット化につながる可能性
イギリスのギャンブル業界団体が実施した調査で、政府がスポーツベッティング会社への課税を引き上げた場合、常習的ギャンブラーの大半が違法な無規制サイトに流れる可能性が明らかになった。YouGovが5月末に実施したこの調査は、ギャンブル税制改革を巡る政府内議論に一石を投じる結果となっている。
2055人の成人を対象とした調査では、「非常に頻繁」または「かなり頻繁」にベッティングを行う回答者の65%が、税率上昇により顧客が税金を支払わず英国ギャンブル規制に従わないサイトに移行する可能性があると答えた。全回答者では53%が税率引き上げによるブラックマーケット流出を「非常に可能性が高い」(14%)または「かなり可能性が高い」(39%)と回答し、起こりにくいと考える人は18%にとどまった。
ベッティング・ゲーミング評議会のグレインヌ・ハーストCEOは「この衝撃的な統計は、政府が一般賭博者への自滅的な増税を強行した場合に何が危険にさらされるかを証明している」と警告した。同氏は過度の増税により顧客が世界最高水準の安全基準を持つ規制市場から、成長する違法で無規制かつ危険なオンライン賭博ブラックマーケットに流出するリスクを強調している。この調査結果は、ギャンブル法見直しの提言実施を含む政府のギャンブル税制・規制改革議論が進む中で発表された。
フカクジツな時代の生き残り戦略、パラマウントで人員削減
映画企業グループである Paramount Global は、米国従業員の3.5%を削減した。これは、消費者が従来の有料テレビから離れ、メディア業界の状況が変化し、経済が不確実な状況に対応するためである。今回の人員削減は、同社が映画スタジオの Skydance Media との合併を控える中で実施された。
Paramount Global を所有する National Amusements と Skydance Media は、2024年7月に合併に合意した。しかし、合併にはまだ規制当局の承認が必要だ。Paramount Global は、Paramount Pictures の映画およびテレビスタジオ、ストリーミングサービスの Paramount+、MTV、Nickelodeon、BET、Comedy Central、そして CBS News を含む CBS テレビネットワークを傘下に収める。
今回の人員削減は、Paramount の共同CEOであるジョージ・チークス、クリス・マッカーシー、ブライアン・ロビンスが従業員に通知した。昨年8月にも Paramount はコスト削減計画の一環として、米国を拠点とする従業員の15%削減を開始した。今回の人員削減は、Disney や Warner Bros. Discovery など、他のメディア企業でも見られる人員削減に続くものである。2025年第1四半期の決算では、Paramount Global の1株あたり利益はアナリスト予想を下回る0.29ドルであったが、四半期収益は71.9億ドルと予想をわずかに上回った。同社は来年度の利益が54.67%増加すると予測する。
ChatGPTが生成した文章は見破られる
AIが生成した文章の見破り方について、興味深い指摘が海外で話題になっている。大学講師が学生たちにAI使用を禁じた課題を出したところ、ある学生が「ChatGPTにもっと人間らしく書くよう指示すれば大丈夫」という浅はかな作戦を立てたエピソードから、この問題が浮き彫りになった。実際にChatGPTに「人間らしく」書くよう指示しても、かえって不自然な文章になってしまい、まるで人間のふりをする宇宙人のような印象を与えるという。
AI文章の特徴として、まず異常なほど完璧すぎる文法と構成が挙げられる。人事担当者の約半数がAI生成の履歴書を見抜いて却下しており、皮肉なことに軽微な文法ミスや誤字がある人間らしい履歴書の方を好む傾向が生まれている。また、ChatGPTは「delve into」「comprehensive」「notably」「vibrant」といった特定の単語や表現を頻繁に使用し、エムダッシュ(—)を過度に多用する癖がある。人称の切り替えも苦手で、一つの視点を機械的に維持し続ける特徴も見られる。
最も決定的な違いは、AIが常に中立的で外交的な立場を取ろうとすることだ。人間なら偏見や個人的な意見を持つのが自然だが、ChatGPTは論争的なトピックでも必ず両論併記し、誰も傷つけないよう配慮した当たり障りのない回答をする。開発者が継続的に改善を加えているものの、AIは結局のところ「優秀な模倣者」に過ぎず、真の創造性や感情的な深みを持った表現は困難だと専門家は指摘している。
ロサンゼルス抗議デモで偽情報が拡散、古い陰謀論が再燃
ロサンゼルスで移民取締りに抗議するデモが発生する中、ソーシャルメディア上で偽情報と陰謀論が拡散している。誤解を招く写真や動画、テキストが広く共有され、移民や民主党指導者への怒りを煽る意図が明確に見て取れる。これらの偽情報は実際の状況を大きく歪曲し、限定的な地域での衝突をまるで市全体が暴力に包まれているかのように描写している。
特に注目すべきは、抗議活動が組織的な扇動であるという古い陰謀論の復活だ。マレーシアの建材卸売業者のウェブサイトから流用されたレンガの山の写真が、ジョージ・ソロスが支援する非営利団体による計画的な抗議の証拠として拡散された。この偽情報は80万回以上閲覧され、「民主党の過激派」による内戦の準備だと主張された。このレンガに関する虚偽は2020年のBlack Lives Matter抗議活動時から続く定番の偽情報で、政府政策への抗議活動を非正当化する手法として繰り返し使用されている。
月曜日にはピート・ヘグセス国防長官が700名の海兵隊員派遣を発表すると、軍事行動を装った新たな偽画像が拡散した。その中には1983年の映画『ブルーサンダー』の静止画像も含まれていた。クレムソン大学の研究者ダレン・リンビルは、保守派がオンライン上で「暴動を演出的に誇張」してトランプ大統領の主張を後押ししていると指摘している。ロシア関連のアカウントも米国を信用失墜させる内容を拡散しており、情報戦が抗議活動の混乱をさらに深刻化させている状況が浮き彫りになっている。
映画のスクリーンサイズ(アスペクト比)について深掘り
映画の画面に表示される上下や左右の黒い帯は、その映像のアスペクト比を示している。このアスペクト比は、映画制作者が観客にどのように映画の世界を見せたいかを伝える重要な要素である。異なるアスペクト比を使うことで、特定の時代を表現したり、登場人物の状況を限定したり、あるいは世界観をより壮大に見せたりすることが可能となる。一般的なアスペクト比が主流である一方で、中にはあえて珍しいサイズのフレームを選び、既成概念を破る監督も存在する。例えばロバート・エガース監督の『ライトハウス』では1.19:1という極めて珍しい正方形に近い比率を採用し、2人の俳優の表情をより印象的に捉えることに成功した。
映画館で上映されるほとんどの作品は、デジタルシネマパッケージ(DCP)を使用し、主に「フラット(1.85:1)」か「スコープ(2.40:1)」のどちらかのアスペクト比が採用されている。しかし、映画の歴史の中では、これら以外にも様々なフレームサイズが使われてきた。例えば、撮影監督ヴィットリオ・ストラーロが提唱した「ユニビシウム(2:1)」は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」から着想を得た。これは、映画館とテレビの両方で最適に表示できる妥協点として提案され、近年ストリーミングが普及するにつれて採用例が増加している。
さらに珍しいアスペクト比としては、「ウルトラパナビジョン70(2.76:1)」がある。これは65mmフィルムと特殊なレンズを使い、映画史上最も横長のフレームを作り出すが、費用が高く、対応する映画館も少ないため、限られた作品でしか使われていない。一方、「フルスクリーン(4:3、または1.33:1)」のような縦長のアスペクト比は、昔の35mmフィルムに由来する。これは垂直な被写体の撮影や、時代設定の表現、あるいは登場人物の閉塞感を強調する目的で使われることがある。また、ヨーロッパでは「ヨーロピアン・ワイドスクリーン(1.66:1)」が標準的で、人物を強調しつつ背景も取り込む効果がある。IMAXカメラで撮影される「IMAX(1.43:1)」は高精細な映像を生み出し、劇場やデバイスに合わせて1.90:1にクロップされる場合もある。これらのアスペクト比は、映画制作者が物語を伝える上で欠かせない選択であり、観客の鑑賞体験に深く影響を与えるものだ。
AmazonではAIによる生成動画広告が溢れかえる
Amazonが運営するプラットフォームで、AI生成動画広告の大規模な展開が始まろうとしている。同社が昨年ベータ版として導入した無料の「Video Generator」ツールが正式版として米国の販売者に提供開始され、わずか数分で「写真のようにリアルな動画素材」を作成できるようになった。この新機能により、販売者はワンクリックで商品広告動画を生成することが可能だ。
最新のアップデートでは、商品を実際に使用している場面を表現する動作改善機能が追加された。例えば従来は机上に置かれた腕時計を単純に表示するだけだったが、現在では人が腕時計を着用して時刻を確認する場面まで生成できる。おもちゃ、工具、装身具などの商品デモンストレーションに特に効果的だという。システムは6種類の異なる動画を自動生成し、ブランドロゴの追加も可能だ。
新機能では人物やペット、テキストオーバーレイ、背景音楽を含む複数シーンの連結動画も制作できる。Amazonの発表動画によると、広告の最大長は21秒程度とみられ、従来のテレビCMやオンライン広告により近い仕上がりになっている。また既存の映像から要点を抽出して短縮版広告を作成する動画要約機能や、静止画像からGIF風の短い動画クリップを生成する機能も搭載された。この無料ツールが全米で一般利用可能になったことで、Amazon上でAI生成動画広告が急速に普及する可能性が高い。
イギリスが再び原子力発電に力を入れはじめる
イギリス政府が原子力発電の本格復活に向けて動き出している。同国では現在5基の原子力発電所が全電力需要の15%を担っているが、大半の設備が2030年までに廃炉予定となっており、長年の投資不足により深刻な電力不足の危機に直面している。この状況を受けて政府は、6月11日の支出見直しで大規模な原子力関連の発表を複数行う予定だ。
政府が準備しているのは、小型モジュール炉の多億ポンド規模の建設契約落札者発表、サフォーク州サイズウェルCメガ原発プロジェクトの資金決定、そして民間所有の原子力サイトの国有化検討などだ。これらの動きは、財務省が長年原子力投資に慎重だったものの、今回の支出見直しがこの議会期中に大型予算を確約する最後の機会となったことで実現に至った。トランプ政権との協力関係構築の一環として原子力分野での協調も視野に入れている。
イギリスは2050年までに原子力発電容量を現在の4倍にあたる2400万キロワットまで拡大し、電力需要の25%を原子力で供給する野心的な目標を掲げている。しかし建設中のヒンクリーポイントCプロジェクトは当初予算の180億ポンド(約3兆6000億円)から460億ポンド(約9兆2000億円)に膨らみ、6年の遅れが生じている現状もある。エネルギー大臣エド・ミリバンドは「原子力プロジェクトを進めたいなら私のドアは開いている」と表明しているが、風力や太陽光発電を重視する姿勢との兼ね合いで原子力への本気度を疑問視する声も業界内では聞かれる。
(Politico)
HubSpotのCEOが語るAI時代の営業とマーケティング
HubSpotのCEO、ヤミニ・ランガンは、技術業界における変化の速さに言及し、これを「キャンディショップにいる子供のよう」と表現する。2022年11月の生成AIの登場が転換点となり、HubSpotは2023年1月に年間のロードマップを大幅に変更した。AIは顧客との関わり方を変え、これまで動かせなかった営業の指標を改善する力があると考えている。例えば、営業チームが顧客と対面する時間は数十年間25%から35%であったが、AIによってこれが変化する可能性を示唆する。HubSpotはAIを全ての製品に組み込み、社員の95%が毎日AIを活用する。
AIの進化は、カスタマーサポートと製品開発に大きな影響を与えている。HubSpotの社内では、AIがTier 1のサポートチケットの45%を解決する。また、HubSpotの顧客が利用する「Customer Agent」では、平均52%の解決率を達成し、最高では70%から80%のチケットをAIが解決する。これは、豊富なナレッジベースと過去のサポート履歴をAIが活用できるためである。AIの導入により、従来の専門家向けのツールから、マーケティングやビデオ編集などの幅広い業務を支援する「ジェネラリスト」を可能にする方向へとシフトしている。
HubSpotは、AI時代において、プラットフォームが「ポイントエージェント」よりも優位に立つと考える。顧客はもはや、部門ごとに分かれた体験ではなく、統一されたシームレスな体験を求めている。AIは顧客の問い合わせに対し、サービス、マーケティング、営業の区別なく対応できるようになる。AIの導入は、リードの「量」から成約の「質」へと焦点が移ることを意味する。企業はAIによって、顧客との対話をよりパーソナルかつ関連性の高いものに変える必要がある。